日本には年間16回(2021年の場合)の国民の祝日が制定されています。しかし、祝日がなにに由来するものなのか、いまいちわからない人も多いのではないでしょうか。このシリーズでは、そんな方々に向けて、その月にある祝日について解説いたします。

今回は11月編です11月には『文化の日』『勤労感謝の日』が制定されています。早速見てみましょう。

『文化の日』11月3日

「文化の日」は「自由と平和を愛し、文化をすすめる日」として、1948年に制定されました。戦前は、明治天皇の誕生日を祝う「明治節」という祝日でした。祝日法が改められる前は、天皇や皇室の行事にまつわるものが多く国民の祝日となっており、明治節も国民から親しまれる祝日のひとつだったのです。

戦後、日本は日本国憲法の公布を明治天皇の誕生日に合わせ、11月3日を「憲法記念日」として祝日にするつもりでした。しかし、天皇から国民への影響を弱めたかったGHQ(連合国最高司令官総司令部)がそれに反対し、憲法記念日は施行された日である5月3日となります。これでは、国民に親しまれていた11月3日は、祝日とする理由がなくなってしまいます。そこで、当時の政府は公布された日本国憲法が平和と文化を重視していることから、新しく「文化の日」という名称にし、11月3日を祝日として残すことにしたと言われています。憲法記念日に関する経緯は5月編でも少し触れていますので是非合わせてご確認ください。

現在、文化の日にはさまざまなイベントが行われています。1937年に制定された文化勲章の授与式も文化の日に実施されることが定例となっており、「文化の発達に関し特に顕著な功績のある方」を讃える日として知られています。また全国各地の美術館や博物館では入館料が無料になるところもあります。身近なイベントで言えば、学校行事の文化祭が11月3日前後に行われていた地域もあると思いますが、それは「文化の日」の考え方に則したものと言えます。

『勤労感謝の日』11月23日

「勤労感謝の日」は「勤労を尊び、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう日」として制定されました。勤労感謝と聞けば働いている人に感謝する日とイメージする方が多いのではないでしょうか。実はもともとの起源は少し違います。勤労感謝の日は以前、新嘗祭(にいなめさい)という五穀豊穣を感謝する祝日でした。

新嘗祭とはどのようなものなのでしょうか。実は日本書紀にも登場するほど、昔から行われていた宮中行事で、その年の収穫に感謝して新穀を神様にお供えし、来年の豊穣を願います。「にいなめのまつり」「しんじょうさい」と呼ばれることもあります。宮中行事なので、あまりなじみがありませんが、今でも毎年行われている行事の一つです。

新嘗祭が名前を変えて現在の「勤労感謝の日」となったのは、文化の日でも触れたようにGHQが関係しています。戦後、天皇からの影響を弱めたかったGHQは国民の行事と切り離すために、新嘗祭という名前を変えて祝日とすることを提案します。そこで、収穫に感謝する日だったことから感謝の日とする案がでました。しかし感謝では漠然としすぎているため、現在の勤労感謝の日として制定されました。

もとは宮中行事などが関係する祝日だった11月23日も、今は労働者のための祝日となっています。いつも頑張っている身近な人たちに感謝を伝えたり、自分自身がゆっくりと体を休めたり、この祝日を有意義に過ごせるといいですね。

まとめ

忙しい日々を過ごしている人が多いと思います。文化の日の博物館や美術館の入館が無料の機会にのんびりとした時間を過ごしてみるのもいいかもしれません。11月の祝日は連休にはなっていませんが、平日の中にあるゆっくり休める時間として活用したいですね。