日本には年間16回(2021年の場合)の国民の祝日が制定されています。しかし、祝日がなにに由来するものなのか、いまいちわからない人も多いのではないでしょうか。このシリーズでは、そんな方々に向けて、その月にある祝日について解説いたします。

今回は5月編です。5月には『憲法記念日』『みどりの日』『こどもの日』が制定されています。早速見てみましょう。

『憲法記念日』5月3日

「憲法記念日」は「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する」ことを趣旨としています。1947年5月3日に日本国憲法が施行されたことを記念して、翌年1948年に公布・施行された祝日法によって制定されました。

日本国憲法とは、簡単に言ってしまえば国の政治の基本を定めるもので、私たち国民を守るための約束です。日本国憲法には「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」という3つの基本の原理があります。日本国憲法の前には大日本帝国憲法というものがありました。これは天皇主権の憲法で、全てにおいての権限を天皇が持っているという内容でした。戦後の憲法改正で主権が天皇から国民に変わり、私たちは日本国憲法の3つの基本の原理で守られ、今の当たり前の生活ができているのです。

 憲法記念日は海外にもあり、国によってお祭りやパレードなどが行われ、賑やかな日となります。海外の憲法記念日は、憲法が制定された日にあたります。一方、日本に当てはめると、日本国憲法は1946年11月3日に公布されたので、本来ならば11月3日が憲法記念日となるはずなのです。なぜ、制定された日ではなく、公布された日が、日本の憲法記念日なのでしょうか。

当時は11月3日が明治天皇の誕生日であることから、「明治節」と呼ばれ親しまれていました。当時の内閣はあえて明治節に新憲法を公布することで、特別な日として残そうとしたといわれています。しかし戦後、天皇から国民への影響を弱めたかったGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が天皇の誕生日に記念日を制定することに難色を示し反対しました。そこで、昔から国民の間で親しまれていた11月3日は現在では名前を変え、「文化の日」として存在しています。これはまた11月編で解説します。

ちなみに、毎年5月3日の憲法記念日を含む5月1日から7日までの1週間は「憲法週間」とされ、法務省の機関では裁判所や弁護士から協力のもと、憲法の精神や司法の機能を国民に理解してもらうための取り組みを行っています。特に決まった行事や習わしなどが無いので注目されることや、大きな話題となることがあまりありませんが、先に記した通り日本国憲法の施行の記念日であれば、日本人として知っておくべき祝日かもしれませんね。

『みどりの日』5月4日

「みどりの日」は「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」ことを趣旨としています。1989年にみどりの日が制定されましたが、日付は今と異なり4月29日でした。なぜみどりの日という祝日ができたのでしょうか。日付の変動の理由とともに解説いたします。

みどりの日ができる前、1948年の祝日法施行で、昭和天皇の誕生日である4月29日は「天皇誕生日」でした。昭和天皇の誕生日であった4月29日の「天皇誕生日」は、1989年に昭和天皇が崩御された後、平成天皇の誕生日である12月23日に変更となりました。令和の現在、12月23日が平日となっているように、当然4月29日も平日に戻る予定でした。しかし、ゴールデンウィークの祝日のひとつであったため、国民の生活に大きな影響が出ることが懸念されました。そこで、昭和天皇が植物や生物など自然に深く親しまれていたことから、みどりの日として祝日が残ることになったのです。ではなぜ今の5月4日にみどりの日が移動したのでしょうか。

みどりの日が5月4日となったのは2007年のことです。2007年に祝日法が改訂され、4月29日が昭和の日となり、もともと制定されていたみどりの日が5月4日に移されました。5月4日は1986年から国民の休日とされていました。それは前回の4月編で解説した通り、祝日と祝日に挟まれた平日を休日としていたからです。当時は記念日としての意味はなく、飛び石連休を解消するために作られました。この移動で休日が増えたわけではありませんが、祝日扱いとなるため土曜日や日曜日にかぶった場合は振替休日ができるようになりました。

みどりの日は、自然に関連した施設でイベントが行われることが多い日です。公園や博物館、動物園などで無料開放や体験などに参加した方もいるのではないでしょうか。

『こどもの日』5月5日

「こどもの日」は「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ことを趣旨とし、1948年の祝日法で制定されました。ゴールデンウィークの中の祝日で一番イベント的で認知度も高い日なのではないでしょうか。また「端午の節句」として聞いたことある方も多いと思います。こどもの日の現在の風習はこの端午の節句が大きく関係しています。

 端午の節句とは、もともと中国から伝わった「五節句」のうちのひとつです。端午の「端」は初めという意味、「午」は午の日という意味から、「月初めの午の日」とされていました。しかし、毎回午の日を数えるのが大変なことから、午「ご」を5「ご」と読み替えるようになり、5月5日が端午の節句となりました。端午の節句が日本に伝わったのは奈良時代と言われています。当時の日本の文化、習慣と結びつき、季節の変わり目である端午の日に、病気や災厄をさけるための行事として、薬草摘みをしたり、蘭を入れた湯を浴びたり、菖蒲を浸した酒を飲んだりしていました。江戸時代頃になると「菖蒲」と「尚武」をかけて、だんだんと端午の節句を尚武の節日として盛んに祝うようになりました。今の私たちに馴染みの深いかたちで行事になり、家に兜を飾ったり、幟(のぼり)を立てたりして、男の子の成長を願っていました。しかし五節句は暦の変更に伴い、明治時代に廃止されました。それでもこのような風習は広く民間に残り、暦が替わった後もそのまま5月5日に行事は行われていたようです。今もこの時期に私たちが見かける鯉のぼりや、兜、ちまきなどは江戸時代から続く文化なのです。

戦後、祝日法の制定でこどもの日をいつにするかの議論になりました。候補日はいつくかあったようですが、結局5月5日の端午の節句の日がこどもの日にもなりました。

まとめ

 1948年の祝日法から、5月の初旬に祝日が集まっていました。70年以上の時の中で大型連休と呼ばれるようになり、私たちの生活の中でなくてはならない休暇となりました。

このご時世で今年のゴールデンウィークもなかなか遠出や遊びに行くことは難しいですが、みどりの日に自然に触れてみたり、こどもの日にちまきや柏餅を食べたりして過ごしてみてもいいかもしれません。せっかくの連休、皆様はどのように過ごしますか?