日本には年間16回(2021年の場合)の国民の祝日が制定されています。しかし、祝日がなにに由来するものなのか、いまいちわからない人も多いのではないでしょうか。このシリーズでは、そんな方々に向けて、その月の祝日について解説いたします。
シリーズ第一回となる今回は1月編です。1月には『元日』と『成人の日』の2つの祝日が制定されています。それぞれの祝日について見てみましょう。
<『元日』1月1日>
一年のうちで最も早い祝日が元日です。「年のはじめを祝う」ことを目的に、毎年1月1日に定められています。日本では、1948年(昭和23年)に国民の祝日として制定されました。この日は日本に限らず多くの国で祝日となっており、世界中で新しい年のはじまりを祝っています。
日本語では、元日によく似た表現で「元旦」があり、同様の意味として使われがちですが、厳密には意味が異なります。元日は1月1日のことを指した表現で、元旦はさらに細かく、1月1日の朝に限った表現です。これは「旦」という字の意味と関係があります。この漢字は地平線から太陽が昇る様子を示した指示文字で、「朝」や「夜明け」を意味しています。そのため、元旦は1月1日の朝に限定した呼び方となるのです(所説あります)。こうした意味でも、祝日の名前は「元日」と設定されています。
元旦と同じように誤解されやすいのが、初夢です。初夢は元日から2日にかけてみる夢のことです。よく「一富士二鷹三茄子」といいますが、これは、初夢に見ると縁起が良いとされる3種類のものを表しています。由来については様々な説がありますが、最も有名なのは、徳川家康の隠居先「駿河の国」の名物を順に並べたとする説です。駿河の国(現在の静岡県中部)には、日本一の富士山がそびえ、その山麓に住む鷹は、鷹狩りに最も秀でていたとされていました。また、当時は茄子が有名だったことから、この3つを優秀なものとして数えたと考えられています。他にも、「駿河の高いもの」とする説や「家康の好物」とする説、「東京駒込」に由来するとする説など様々です。いずれにしても、初夢は元日の夜に見る夢ですので、お間違いないようにしてくださいね。
元日は一年のはじまりの日。目標を立てるのにピッタリの一日です。新しい手帳やスケジュール表に新年の抱負を書き留めてみるのはいかがでしょうか。一年の間何度も開く手帳に書いてある文字は、自然と目に留まり、少しずつ深層意識にまで影響を与えます。元日にこそ、ぜひ手帳を開いてくださいね。
<『成人の日』1月第2月曜日>
成人の日は毎年1月の第2月曜日に定められている祝日で、2021年の場合は1月11日に当たり、多くの地域で成人式が行われます。法律上は「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」ための日とされています。制定された1948年から1999年までは毎年1月15日が成人の日でしたが、2000年以降はハッピーマンデー制度によって、1月第2月曜日に変更されました。これによって早ければ1月8日、遅くとも1月14日までに成人の日を迎えることになりました。
成人の日が1月15日に制定されたのは「元服の儀」が由来です。元服は奈良時代から続く通過儀礼で、成人になった男子に執り行うものでした。この儀式は小正月(1月15日)に実施されるのが通例だったため、祝日としてもこの日に制定されたというわけです。
余談ですが、元服の儀は「冠婚葬祭」という言葉とも深いかかわりがあります。冠婚葬祭はそれぞれの文字が人生の節目(あるいは死後の扱われ方)をしめしており、「冠」が元服のことを意味しています。奈良時代の公家は元服を迎えた際に「冠」や「烏帽子」を頭につける文化がありました。この習わしから、成人することの象徴として「冠」の字が使われるようになったのです。古くから日本人の間で「成人になる」ということが重要なものとして扱われていたのがよくわかります。
近年では、成人式を成人の日に執り行わない地域も増えてきています。例えば、豪雪地帯では、最も雪の多くなる時期に集まることが難しいため、お盆の時期に実施する自治体や、以前に比べ大学・専門学校等に進学する学生が増えたことから、学校が開始している時期を避け、1月3日ごろに実施する自治体などがあります。人々の生活習慣の変化や環境に合わせて、成人式の在り方も変化しているということですね。
成人式については今後も大きな変化が起きる可能性があります。2022年4月以降、成人年齢が18歳に引き下げられる予定です。これに伴って成人式が現在通例となっている20歳を招待する方法から引き下げられる可能性もあります。ただし、18歳は受験時期と重なることから、多くの自治体はこれまでの通り20歳を招待するということになりそうです。
話が「成人の日」から「成人式」にそれてしまいましたが、こういった社会の変化の中でも1月第2月曜日が成人の日だということはしばらく変わることはないでしょう。これには、既述したような歴史的背景があると同時に、成人になる方だけはでなく、全国民が、成人になる方を「祝いはげます」日であるからです。成人を迎える人は自身を見つめなおし、そうでない人は成人を迎える人を応援する特別な日です。直接、成人を迎える人と接点がなくても、少し意識してみるといいかもしれませんね。
<まとめ>
1月にある2つの祝日「元日」と「成人の日」について簡単に解説してきました。どちらも古くから日本に根付いている行事と関連がある大切な祝日でした。皆さんも祝日を過ごす際はその祝日の由来を考えてみてはいかがでしょうか。