日本には年間16回(2021年の場合)の国民の祝日が制定されています。しかし、祝日がなにに由来するものなのか、いまいちわからない人も多いのではないでしょうか。このシリーズでは、そんな方々に向けて、その月にある祝日について解説いたします。
今回は2月編です。2月には『建国記念の日』と『天皇誕生日』の2つの祝日が制定されています。それぞれ見てみましょう。
『建国記念の日』2月11日
「建国記念の日」は現行法では1966年に、「建国をしのび、国を愛する心を養う」日として制定されました。アメリカの独立記念日などと同じようなニュアンスの祝日ですが、日本の場合は歴史上、明確に「建国された日」はありません。そこで日本神話の中で初代天皇の神武天皇が即位した日2月11日(旧暦1月1日)を建国を祝う日とすることにしました。なお、法律上は「政令で定める日」とされていて、当時の佐藤内閣が別途「建国記念の日となる日を定める政令」を出しています。
現在の建国記念の日にあたる祝日は、実は明治時代から「紀元節」として存在していて、当時も旧暦の1月1日が祝日でした。一時的になくなったのは、日本が戦争に敗れ、GHQの指導がはいったことが原因だと言われています。建国記念の日同様、紀元節は神武天皇の即位に由来しています。日本の戦争の歴史は天皇の名のもとに実行されてきました。GHQは日本人の天皇を主体とした結束力に危機感を持っていて、天皇への崇拝が高まり、再び戦争への道を歩むことを恐れていたと言われています。紀元節を認めることで、天皇の力が増すことを懸念して紀元節を廃止させたのです。
その後、日本の祝日として復活するまでには、他の休日と比べて長い時間がかかりました。紀元節が天皇と強い関係があることが懸念されていただけでなく、根拠のある「建国日」がないことも反対の原因として挙げられ、当時の野党から大きな反発があったためです。
法律が可決されたころには敗戦から時間が経過し、戦争に対する論調が収まっていたことや、「建国日」としての制定ではなく「国民が建国を祝う」ことを目的としたこと、国民から復活を願う声が高まったことから「建国記念の日」として、改めて制定されることになりました。ちなみに、よく「建国記念日」と言い間違えられますが、正しくは「の」が入って「建国記念の日」です。これは、「の」を入れることで明確な建国日ではないことを表現しています。確かに、理由がわかると「建国記念日」では少しおかしいですね。これは日本語の面白いところです。 余談が長くなりましたが、2月11日は「建国記念の日」です。この日に日本の歴史を振り返ってもいいかもしれませんね。
『天皇誕生日』2月23日
天皇誕生日は「天皇の誕生日を祝う。」ことを目的とした祝日で、その時の天皇の誕生日を祝日として制定しています。現在は第126代天皇である徳仁様の誕生日、2月23日が「天皇誕生日」です。徳仁様が即位されるまでは、平成天皇明仁様のご誕生日である12月23日でした。明仁様が2019年5月1日に譲位されたことで、2019年12月23日は天皇誕生日ではなくなりました。このときすでに令和天皇である徳仁様の誕生日2月23日は過ぎていましたので、2019年は現行法下でははじめて天皇誕生日がない年となりました。
天皇誕生日が現行法に記載されたのは1948年のことですが、それ以前も「天長節」として古くからお祝いの日として根付いていました。古い記録では、奈良時代の光仁天皇の時代に天長節の儀が行われたと記載されています。これが、明治期に入ると法律で制定された祝日として明記化され、途中憲法が変わったり、法律が変わったりしましたが、明治時代は11月3日(旧暦9月22日)、大正時代は8月31日、昭和は4月29日、平成は12月23日に天皇誕生日になっています。
ちなみに、明治天皇の誕生日と昭和天皇の誕生日は現在も祝日として残っています。明治天皇の誕生日11月3日は「文化の日」、昭和天皇の誕生日は「昭和の日」です。文化の日は、日本国憲法が公布された日ですが、当時の首相であった吉田茂は意図的にこの日に公布したと言われています(これ以前も明治節として祝日とされていました)。昭和の日である、4月29日は昭和から平成に時代が変わる際に「みどりの日」と名称を変更しました。その後、2007年に4月29日を「昭和の日」に改称し、「みどりの日」を5月4日に移動させました。
明治以降、大正と平成以外の天皇の誕生日はいずれも現在も祝日として残っていますが、これは大正と平成が特殊なケースだったわけではなく、他の例が特別だったためです。明治天皇の誕生日は、現在では、明治天皇の誕生日としてではなく、日本国憲法の公布日として祝日に制定されています。この日を明治天皇の誕生日と合わせたために結果的に祝日として残ることになりました(意図が変わったので名称は変わっています)。また、昭和の日は、4月29日がゴールディンウィークを形成する重要な一日だったため、平日に戻すことを避け祝日として改めて制定されました。通常は改元されると同時に天皇誕生日も移動することになりますので、こちらの2例が特殊ということになります。 かくして、令和の天皇誕生日は2月23日です。この日は、天皇のお誕生日をお祝いしつつ、日本の歴史を振り返ってみてもいいかもしれませんね。
まとめ
2月にあるふたつの祝日はどちらも天皇に由来していました。天皇という制度は日本独特のものですし、君主制を取っていない国なども多い中、天皇がいらっしゃることは日本人としての誇りになりますね。