日本の祝日について解説をするシリーズ『日本の祝日を学ぼう』。6月は祝日がありません。そこで今回は特別編として、何となく知っているけどよくわからない「六曜」について解説いたします。
六曜ってなに?
六曜は、暦に関連するその日の運勢の一つです(こういったものを歴注と言います)。「先勝(せんかち・せんしょう)」「友引(ともびき)」「先負(せんまけ・せんぷ・せんぶ)」「仏滅(ぶつめつ)」「大安(たいあん)」「赤口(しゃっこう・しゃっく)」の6種類からなり、現在でも「大安は縁起がいい日」として結婚式の日取りに選ばれるなど生活に影響を与えています。
六曜の起源は中国ですが、詳しいことはわかっていません。一説には中国三国時代に諸葛亮が活用したという話もあります。日本に伝来したのは14世紀、鎌倉時代と言われており、江戸時代から徐々に広まりはじめ、一般的に普及したのは明治時代のことでした。これには明治維新の政策がきっかけとなりました。明治5年に政府はそれまでの暦(現代でいう旧暦)を廃止し太陽暦を導入し、旧暦のカレンダー製作に規制をかけました。しかし、生活に浸透していない太陽暦のカレンダーは庶民に受け入れられず、カレンダーの売れ行きが急落します。困った当時のカレンダー業者は江戸時代に広まりつつあった「六曜」を書き入れることでカレンダーの売上を伸ばそうとしました。それまで庶民に深くは浸透していなかった六曜は規制の対象になっておらず、売上回復に貢献しました。これをきっかけにカレンダーには六曜が書かれることが一般的になったと言われています。
六曜の規則
100年以上前の明治時代に普及し始めた六曜ですが、現代でもカレンダーに記載があるのを目にします。ところが、どういった規則で並んでいるのか知らない方がほとんどではないでしょうか。実は六曜にはしっかりとした規則性があります。規則は大きく二つです。一つは、「先勝→友引→先負→仏滅→大安→赤口」の順で繰り返されることです。二つ目は旧暦の1日は月によって決まっているということです。旧暦の1月1日は「先勝」で、2月は「友引」といった具合に、月のはじめで繰り返しがリセットされます。そのため、旧暦上では、日にちと六曜は必ず一致しています。ちなみに、旧暦には閏月があり、閏月の1日は前の月と同じルールになります。
「六曜」は仏教用語じゃない
六曜は仏教に起因すると考えている方が多いようですが、六曜と仏教には関連はありません。実は、仏教は占いを推奨していないので、仏教用語が占いに使われること自体が不自然です。この勘違いは六曜で「仏滅」があることから、仏教の祖である仏陀が入滅した日と間違って解釈されたものです。また、偶然にも、この入滅の日である旧暦の2月15日が必ず「仏滅」に当たることから、この誤解の裏付けのように解釈されてしまったと思われます。
それぞれの要素の意味
六曜は占いの要素を持っているため、各六曜にはそれぞれ意味があります。ただし、風習の中で意味が変わったり、地方によって内容に違いがあったりするため、ここでは一般的な内容をご紹介します。
<先勝(せんかち・せんしょう)>
この日は「何事も早く済ませてしまうのが良い」日です。そのため、午前は吉で午後が凶といわれます。「先んずればすなわち勝つ」という意味で、古くには「速喜」や「即吉」と言われていた時代もあります。訴訟には吉日です。
<友引(ともびき)>
この日は「良くもなければ悪くもない」日です。友引はもともと「共引き」のことで、勝負の決着がつかないこと、つまり「引き分け」を意味していました。朝と夕が吉で昼が凶です。現代では地域などによって友引の葬儀は避ける風習がありますが、これは「友引」という字面が「友人をあの世へ引き入れる」といったイメージに結び付けられた結果生まれた後付けで、六曜とはまったく関係ありません。
<先負(せんまけ・せんぷ・せんぶ)>
この日は「急ぎの用事は後回しにすべき」日です。「先勝」の反対で、「先んずればすなわち負ける」を意味し、午前が凶、午後が吉です。もともとは「小吉」「周吉」とされ、吉日の一つでしたが、「負」という文字のイメージから現在の解釈に変わったと言われています。
<仏滅(ぶつめつ)>
六曜の中で最も運勢の悪い日で「万事に凶」とされる日です。お祝い事は避けられます。かつては「虚亡」「空亡」と呼ばれていました。これが「空虚である」というイメージと結びつき「物滅」と表現されるようになり、漢字が変化して現在の「仏滅」に落ち着きました。運勢が悪いので「遠慮して過ごす」ことが良いとされていますが、「大安」よりも新しく何かをスタートさせるには良い日という声もあります。
<大安(たいあん)>
大安は「何事も積極的に行うのが良い」日です。「大いに安し」という意味で、六曜の中では最も運勢が良い日取りです。お祝い事がこの日に行われることが多く、現代でも結婚式や上棟式などの日取りとして好まれています。大安は何をやってもうまくいく日なので、宝くじの購入日にする人や、大きな勝負に出る人のゲン担ぎの日として様々な場面で意識されています。元々の字は「泰安」でやすらかで安定した様子が表現されています。
<赤口(しゃっこう・しゃっく)>
この日は、「何事にも邪魔がはいったり支障がでたりする」日です。人を威嚇したり悩ませたりする鬼神にゆかりがあることからこう考えられています。一日のうち午の刻(11時頃から13時頃)のみが吉であとはすべて凶です。「赤」が「血」や「火(災)」を連想させるので刃物や火を扱うことは避けるべきと考えられていますが、刃物と火を扱う代表格「台所」での仕事は毎日欠かせないのであまり浸透はしていません。赤口も仏滅同様お祝いには向いておらず、結婚式などは避けられます。
まとめ
今回は六曜についてご紹介してきました。すでに廃れてしまっている風習も多く、六曜が現代人に与える影響はそれほど大きくはなさそうです。一方で結婚式など、人生に一度の大きなイベントではゲン担ぎなどで今でも利用されています。ビジネスの場などでは、贈り物をするタイミングなどによっては相手に失礼になってしまう場合もあるので注意しましょう。ただ、六曜自体は根拠の薄い占いですので、気にしすぎず程よく使っていくのがよいかもしれませんね。