シリーズ『日本の祝日を学ぼう』第7回～7月編～

日本には年間16回(2021年の場合)の国民の祝日が制定されています。しかし、祝日がなにに由来するものなのか、いまいちわからない人も多いのではないでしょうか。このシリーズでは、そんな方々に向けて、その月にある祝日について解説いたします。

今回は7月編です。2021年7月には『海の日』『スポーツの日』が制定されています。早速見てみましょう。

7月20日が海の記念日となったきっかけは明治天皇の巡幸です。明治天皇は1876年（明治9年）に「明治丸」と呼ばれる船に乗り、約50日かけて東北地方を巡幸しました。明治丸は、明治政府がイギリスの造船所に発注して作られた灯台巡廻業務用の船です。その船は特別室やサロンも備えていたため、ロイヤルシップの役割も果たしていました。一等飛脚船同様の出来と言われた船に乗り、明治天皇は青森から函館を経由して、7月20日に横浜に帰着しました。明治天皇が船での旅を無事に終えたことで、船の安全性が証明され、日本で船旅や海運が盛んになりました。そのことを記念として作られたのが海の記念日です。

7月20日は海の記念日として国民に親しまれていましたが、祝日化を願う声が高まり1995年に「海の日」という名前で国民の祝日として制定され、翌年の1996年から施行されました。海の日を国民の祝日としている国は他に例がなく、海に囲まれた日本ならではの祝日と国土交通省の文書にあります。

そして、2000年にハッピーマンデー制度が成立し、2003年から海の日は7月の第3月曜日と定められました。ハッピーマンデー制度とは、1980年頃か浸透し始めた週休2日制と、祝日をつなげて2連休以上の期間を増やすため、国民の祝日の一部を従来の日付から特定の月曜日に移動させる制度です。これによって、海の日は毎年土曜日、日曜日とあわせて3連休の一部になっています。2021年の暦では7月19日が本来の海の日の祝日です。しかし、2021年に限ってはでは7月22日に移動しています。

2020年も祝日の特別措置が取られていたように、2021年もオリンピックが開催される関係で祝日が移動しています。開会式に合わせて、選手や観客等の円滑な輸送と、経済活動、市民生活の共存を図るためとして海の日が7月19日から22日に移動する措置が取られました。

『スポーツの日』7月23日

1948年の国民の祝日に関する法律が施行されたときは、体育の日はまだ存在していません。実は、体育の日は東京オリンピックに大きく関係しています。1964年、日本で最初の東京オリンピックが開催されました。その開会式が10月10日であったことから、その日を記念して体育の日とすることになりました。夏に開催されるオリンピックがなぜ10月に開催されたのでしょうか。これには理由があります。日本での夏の開催は、梅雨の時期とかぶる可能性があり、雨の確率が高かったのです。それにより、比較的晴れの日が多いこの時期に開催することになりました。前日は台風の影響で大雨でしたが、当日は青空が広がっており、無事に開会式が行われました。この時の「世界中の青空を全部東京に持ってきてしまったような、素晴らしい秋日和でございます。」というNHKアナウンサーの実況は、今でも名実況として語られています。初めての東京オリンピック開催を記念して1966年から体育の日として祝日に制定されました。その後、10月10日は2000年のハッピーマンデー制度の改正により、10月の第2月曜日になりました。そして、2020年の東京オリンピック開催をきっかけに体育の日はスポーツの日と名前を変更しました。体育という言葉は学校の授業のイメージが強くあります。2011年のスポーツ基本法では授業だけではなく、自発的にスポーツを楽しんだり、スポーツを通じて地域や国を超えた交流を図ったりとスポーツの役割や価値が見直されました。そのことを踏まえ、2回目のオリンピック開催をきっかけに体育からスポーツへと名前を変更しました。今年は海の日と同様の理由で、10月11日から7月23日に移動する措置が取られています。

まとめ

海の日、スポーツの日はともに私たちの生活の中でイベントが多いイメージがあります。海の日は梅雨明けや夏休み、海水浴の解禁日など何かと目にする祝日ではないでしょうか。スポーツの日も同様に学校行事や地域の運動会があったり、体を動かすイベントが開催されていたりします。今年はどちらもオリンピックにより移動し、連休となっています。そろそろ梅雨も明けて夏が本格的に始まります。感染、熱中症などに気を付けながら休みを満喫したいですね。