日本には年間16回(2021年の場合)の国民の祝日が制定されています。しかし、祝日がなにに由来するものなのか、いまいちわからない人も多いのではないでしょうか。このシリーズでは、そんな方々に向けて、その月にある祝日について解説いたします。

今回は3月編です。3月には『春分の日』が制定されています。早速見てみましょう。

『春分の日』春分日

「春分の日」は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日として、1948年に制定されました。2021年は3月20日ですが、祝日法上では「春分日」として制定されていて、具体的な日付を指定はしていません。これは、太陽の位置に基づいた天文学によって定めているためで、2月に発行される官報に翌年の春分の日が掲載されます。おおよそ2月20日か21日になりますが、ごくまれに19日や22日になる場合もあります。

春分は二十四節気の一つです。二十四節季は、1年間の太陽の動きを15度ずつに24分割した季節の節目のことで、春夏秋冬ごとに6つの節目を用意しています。春は「立春(りっしゅん)」「雨水(うすい)」「啓蟄(けいちつ)」「春分(しゅんぶん)」「清明(せいめい)」「穀雨(こくう)」に分けられています。この中で春分は太陽の位置が0度の位置にあり、太陽が真東から昇り、真西に沈む特別な日です。これによって昼と夜の長さがほぼ等しくなります。春分が「昼と夜の長さが同じ日」と言われるのはこのためですが、じつは、厳密には昼夜の長さは一致せず、昼の方が長くなります。

理由は天文学的な要因で2つあります。一つ目は日の出日の入りの定義によるものです。昼の時間は日の入りから日没までの間のことです。日の出は太陽が地平線から顔を出したタイミング、日の入りは完全に太陽が見えなくなった瞬間です。一方、先ほど説明した太陽が0度になる位置は、太陽の中心を基準としています。そのため、太陽1個分昼の方が長くなるのです。

もう一つの要因は光の屈折によるものです。光は大気を通過する際に屈折する特徴があります。そのため、実際にはまだ地平線より低い位置にある太陽が、見かけ上は地平線よりも上に浮き上がって見えるという現象が起こります。この屈折の大きさはおおよそ太陽1個分です(大気の状態などによって変化があります)。日の出と日の入りを合わせると、太陽2個分昼が長くなります。つまり。日の出の定義の1個分と合わせると、合計で太陽3個分昼が長くなるということです。実際に昼と夜の長さが一緒になるのは、春分よりも4日程度後になります。ちなみに、この現象は秋分でも起こります。

春分と秋分は季節の分かれ目として似た特徴があるため、年中行事にも同じものがあてられる例が多くあります。例えば、彼岸です。彼岸は春分と秋分の前後3日間を加えた7日間のことを言います。彼岸は仏教の用語で、先祖に感謝すると同時に、重要な修行を行う期間とされています。現代では修行の期間としての認識はかなり薄くなっていますが、春分の日に、先祖へ思いを馳せてみるのもいいかもしれません。

まとめ

「春分の日」は天文学にのっとった季節の節目です。ちょうど3月の卒業シーズンと被るので、卒業式が行われることも多いのではないでしょうか。春分の日は季節の変わり目でもありながら、人生の節目、生活の節目でもあります。4月からの新生活に向けて、気持ちを改めるには最良のタイミングかもしれません。皆さんもぜひ、春分の日に来年度の目標を立ててみてはいかがでしょうか。